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十三夜月待ち

お米とソバの脱穀が終わり、十三夜とキルタンの会の、二つの大きな催しが終わりました。いっとき今ここを離れ、私たちを遠い懐かしい世界に連れて行ってくれた声明に似たキルタンの歌会。息をのむような美しさの十三夜の月の出。体を使った農作業と、心に響く月待ちと歌う瞑想のあとは、弛緩しながら長い冬に向かって、ひとつひとつ心身が閉じていく感覚です。ことを終えた今、そういう自覚を目の前に開かれた里山の風景が後押ししてくれます。閉じられ開かれ、夜と昼の日々はくり返し、春夏秋冬の季節は巡ります。里山は紅葉の盛りを過ぎ、落ち葉の敷物に淡い斜めの日差しが落ち、裸の木々の林に森に、松や杉の緑が浮き立つ時節になりました。

朝夕に霜は運ばれ、風はなく日が差せば暖かい。冬が来る前の穏やかな日々が続いていたその夕刻、小高い山の松林の樹間がにわかに明るくなりました。時速3700キロでありながら、徐々に山の端に顔を出すお月様。十三夜の月待ちです。広縁に集まった22人が月の出を待つ。なんというわくわく感。月待ちをするその一つのことで、こんなに盛り上がりひとつになれることの不思議。厳かで平穏な心の布目模様が辺りに広がります。

今年も十三夜の月は名月でした。集まった人の心を引きつけてやまない十三夜の山の月がありました。お月様と夏林一彰さんのギターの弾き語りという名優に魅せられ、仕出しのさとうの十三夜の月見弁当、栄宝堂の十三夜饅頭の脇役に支えられ、今年も十三夜の月待ちを無事終えることができました。お陰様でひと区切りがつき、これから冬仕度を整えることができます。

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御鼻部山(おはなべやま)展望台

山の畑でソバを刈っていると、北の空から白鳥の群れが渡ってきました。クワーク、クワークと励まし助け合うように声を掛け合い、南へ向かっていきました。天地に冬がきました。天地は夏と冬しかありません。冬と夏の境界を春、夏と冬の境を秋、と人が呼んでいるだけで、天地は二季です。地球の生き物は、二季のめぐりの中で生き、いのちを繋いでいます。この地で植物や動物の営みを観察していると、そのことがよくわかります。

季節の境界はとても魅力的で、その一つに紅葉があります。全山が錦を纏い、装う姿は圧巻です。毎年この時期、迷が平を抜け、十和田湖、奥入瀬、蔦温泉、笠松峠、酸ヶ湯、八甲田、田代平へ、今年の紅葉はどんな様子でしょうかと定点観察しに行きます。自然は、年ごとに紅葉の衾紙を張り替えます。早かったり遅かったり、濃かったり薄かったり、あでやかさも枯れ具合も毎年違うのです。時はくり返しながらも、前へ移動し今を形作っています。今年の今の様態が紅葉の景色に表出されます、それが面白いのです。

今年は御鼻部山(おはなべやま)展望台からの十和田湖の眺めがすばらしかったです。ここから雄大な十和田湖が一望できます。その日は寒気がやってきて、雪雲が流れていました。その雲の隙間から薄日が差し、大きな鏡の湖水に雲の影が流れていました。今まで見たことのない別の世界の風景が広がっていました。

湖に浮かぶ二つの半島の写真右が中山半島、左が御倉(おぐら)半島。その二つの半島に囲まれているのが中の湖(うみ)です。大昔、火山の爆発でできた大きな湖に、後年さらに爆発が起こり、その部分が深い湖となります。それが中の湖で、水深が327メートルほどあります。十和田湖は日本唯一の二重式カルデラ湖で、周りの浅い湖から深い中の湖へと、水は川のように流れています。そのことが、もとは紅鮭だったヒメマスの生育の鍵を握っているようです。

それにしても十和田湖は魅力的です。湖を見ていると、湖の底の無意識の世界とか井戸や地下室とか闇の世界とかに、魂が連れて行かれそうになります。吸引のエネルギーは相当なものです。昔の人も不思議な力を感じていて、それが江戸時代に盛んだった十和田信仰につながっていたのでしょう。紅葉もいいが、古人が感じていた世界を、今も感じ取れるのが十和田湖の魅力だと思います。

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