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楽しい草取り

田植えの目安花のミツバウツギの白い花がしぼみ、時節は陰暦の皐月に入りました。どの中山間地の田も、田植えを程よく終えて一息つくところですが、今どきの農家は忙しい。きゅうりやタバコ栽培で生計を立てているので、休む暇がないほどよく働いています。

私が借りた田も、田起こし、荒搔き、代だし、苗の確保と順次事を運び、陰暦の卯月二十一日に田植えを終えました。ひと安心ですが、「Happy End で始めよう」のように田植えの快い終了は、草取りの日々の始まりを意味します。

タイヌビエ、ホタルイ、シズイ、コナギ、オモダカとつきあいながら、これからほぼ2カ月の濃密な田んぼ通いが始まります。除草剤をまかない分、草は取っても取っても生えてきます。特にヒエは「私はイネさんより体は小さいけれど負けないわ。ひと月もすればすぐに背高になってみせるから」と言わんばかりに根を張り、イネの背丈を越えてきます。でも敵にしてはいけません。厄介だけど薬で根絶やしにするのではなく、ヒエともうまくつきあいながら、イネの成長を手助けしたいのですが、でも、油断すれば手に負えなくなります。
そこは草との勝負の世界である。自然と調和なんて悠長なことを言ってたら、草に負けてしまいます。米の収穫はおぼつかなくなるのです。

「ヒエさん、あなたの旺盛な生命力といったら、それはそれは尊敬に値すること、重々承知していますが、ここはまあ何とかむきに大きくならないよう、そこそこでお願いしますよ。」
そうつぶやきながらも、ヒエの姿を見つけ次第、容赦なく引き抜いていきます。私もいつも矛盾の中で生きているのです。

五月雨の時節は、朝は早くに起きて田んぼに通い、湿った風に吹かれつつ、大滝詠一の「楽しい夜更かし」を「楽しい草取り」の歌に読み替えて、「楽しいよ」のフレーズを幾度なく口ずさみながら、田の水に浸かる日々を送ります。

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刀剣乱舞

古民家でキャラクターの動画を撮りたいと連絡があり、5月の好日、20代の女性5人が、縄文のうずまき社に来社しました。古民家とキャラクターの動画、どう結びつくのかと思っていましたが、今は刀剣女子ブームで、和のものや歴史物はキャラクター動画の舞台として相性がいい、と教えてくれました。みなさん歴史に詳しい歴女なのです。

午前中は、念入りに化粧をし着替え、刀剣乱舞のそれぞれのキャラクターに徐々に変身していきます。その時間は、今という時間と歴史の時代のあわいを行きつ戻りつ、時の揺りかごのなかで、夢見心地の気持ちよさに浸っているのでしょう。奥の部屋からは笑い声が絶えません。そしてお昼ごろには、キャラクターへ変身が整います。変身が整えば、仕事をし生活する生身の自分、現実のいろいろなものを抱え込んでいる自分、はもういません。完全無欠の別人の自分が、そこにいます。決めポーズがかっこいいのです。

変身、楽しいだろうな、その気持ちよくわかります。まるで高い空を飛んでいるような、高揚感のあふれた自分に変身しているのだから、変身しているご本人は楽しくないはずがありません。もっとも、礼儀正しい若者で、こちらも楽しい時間を過ごさせてもらいました。

別のものになりたいという変身願望は、人にはだれでもある気がします。それは、人もまたおぎゃと生まれた時から、欠損を抱えているからなのでしょう。欠けているものを埋め合わすように、人は相手を求め、出会いを求めます。そして今とは違う新しい自分になりたいと願うのです。
「だれかに あいたくて なにかに あいたくて 生まれてきた― そんな気がするのだけれど…」工藤直子さんの「あいたくて」の詩がいいですね。いつ、どこでだかわからないけれど、分かれたはずの自分の片割れを、人はずっと探し求めている気がします。

けれどもですね、欠損を埋めるためには高みにのぼるだけではなく、いつか自分自身の暗闇に下りていかねばならない時が来ます。そう、いつだかきまっていないけれどいつか。暗闇の底は深く、それはまだ20代の若者には尚早です。人生経験をたくさん積んでからでしか下りられないところですから、今は変身の楽しさを力にして、明日からのお仕事をまた、がんばってください。

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