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蓑ヶ坂

岩手と青森の県境に、奥州街道の難所である蓑ヶ坂(みのがさか)がある。 旅人がこの峠を上り詰めると、俄かに雨風がわき起こる。雨に濡れて心細く思っていると、目の前の松の枝に真新しい蓑と笠がかかっている。これ幸いと、旅人はその蓑と笠をかぶり、歩き出す。

峠をしばらく歩き下りて、沼のほとりに差しかかる。すると、蓑に化した大ムカデが正体を現し、旅人を沼まで引きずり下ろし、たちまちのうちにその大あごで喰らってしまう、という昔話が残っているところである。

その蓑ヶ坂の峠に立つ。眼下に望む馬渕川(まぶちがわ)は、ゆったりとした蛇行曲線を描いて流れている。馬渕川は、ここで火山岩の屹立した壁に阻まれ、大きくS字に折れ曲がる。舌崎と名づけられた舌状の土地は、川が運んできた有機堆積物で、肥沃な耕作地になっている。

思うに、ぼくたちの行く手にも、その時代時代の壁がいつも立ちはだかる。小さな壁の時もあれば、大きな壁の時もある。小さな壁は、努力と工夫次第で何とか乗り越えられても、決して小さな壁とは言えない時は、蛇行を余儀なくされる。それは妥協かもしれない、失敗だと思うかもしれない。もしかしたら非難されるかもしれない。でもあとから考えると、そんな時意外にも、思考の沃土というものが、曲線の内側に堆積しているものだ。

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